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吉行淳之介「原色の街」より

「気に入るということは、愛することとは別のことである。気に入るということは、はるかに微温的なことだ。愛することは、この世の中に自分の分身を一つ持つことだ。それは、自分自身にたいしてのさまざまな顧慮が、倍になることでもある。そこに愛情の鮮烈さもあるのだが、彼はわずらわしさが倍になることとして、そこから故意に身を遠ざけていた。それは彼が怠惰なためでもあり、又、感じ易すぎる自分自身にたいして疲れているためでもあった。」(吉行淳之介)

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愛と恋の違いについてと、言い切ってしまっては、吉行氏に申し訳ない気もするのですが、現在では、この両方の違いをTVやなにかで聞くことがあると、思います。愛は自分が二人になる。つまり、愛する相手も自分自身のように思い遣るということでしょう。私は、その後の、吉行氏の感性を、芸術家らしく思います。愛を遠ざける理由を、主人公の怠惰とし、又感じ易すぎて疲れるからとする。その主人公はもちろん作家そのものなのでしょう。その風にも震えるような繊細で張り詰めた神経が、作家の文体を独特の匂いが漂い、色合いのあるものにしたのでしょうね。

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